□ 新田義辰
鎌倉物語にこうある。故少将義宗の子に相模守義辰（鎌倉大草紙では行啓入道にしている）という人がいた。この人は幼少の時からあちらこちらに隠れ住んで身を隠して、足利基氏の追跡を免れた。かつて永徳の頃まで信濃大河原というところに隠れ住んでいたが、ここ最近では国中の者どもがこれを知って大勢討ち取ろうとやって来たので、ついに新田の残党を集めて波合というところで出会って合戦となったのだが、多勢に無勢でかなわなかった。 そのとき宮方の大将として戴いていたのが宇津宮（これが尹良親王であろう）で、新田の一族郎党は多く討死にしてしまい、義辰父子は命からがら生き延びてひそかに奥州に下り、酒部というところに潜伏していたのだった。
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