□ 明神臨幸の道を照し給ふ事 |
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同じく先帝のこと、花山院をひそかに脱出なされて大和の方に赴かれた時、たいへんに暗い夜であったのでお供する人々もどうしようかと思い悩んでいたのを耳にされて、 「ここはどこら辺か」 とお尋ねになる。侍従の吉田忠房殿が、 「伏見稲荷の御社前であります」 と申し上げたところ、御歌に むば玉の くらき闇路に 迷ふ也 我にかさなん みつの燈火 と詠まれて、伏して拝まれる。すると御社の上より妙に赤い雲が一群湧き起こってきて、臨幸の道先を招くように照らす。そして大和の宇智山近辺にお入りになったころには、雲は金峯山の上で消え失せたのだった。これはお供して実際に見たことである。 |
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