□ 詠歌の事 |
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綾小路敦郷卿が久しぶりに訪問くださいました。たいへんうれしくお会いしました。たくさんの言葉を書きつけて 「山家雲、山家雨という風情を詠んでみましょうか」 とおふざけになります。私は昔から無教養ですのでいまさら詠めるはずもなく、しかしあまりお断りするのも悪いように思われて、 山家雲 山家雨 よそに見て 住まれんものか 山里の 雲さへかへる 夕暮のそら つれづれも 絶えて住みける 山里の 軒端もくづる 雨の音かな 源康村がこの歌を見て、 「幸運ですな」 とからかったときには、実に恥かしかったです。 |
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